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和田秀樹 50歳からの活力人生
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3月 「健康オタクは早死にする!? フィンランド症候群の教訓」 3/10
 前回、いつまでも若々しくいるためには、枯れた老人ではなくギラギラした老人を目指すことが必要だと述べました。今回は、長生きのためのコツのようなお話をしましょう。
 長生きのために、健康に気を使うのは悪いことではありません。しかし、「健康オタク」といわれるほど健康についてマニアックに、神経質になると逆効果になることがわかってきたのです。
 それを証明している「フィンランド症候群」という興味深い調査結果があります。これは、フィンランドの保険局が実施したもので、この名称がつきました。
 どういう調査かといえば、まず40歳から45歳の上級管理職約600人を選び、定期健診、栄養学的チェック、運動、タバコ・アルコール・砂糖・塩分摂取の抑制の指示に従うように依頼したのです。いわゆる健康的な生活を、押しつけたわけです。
 それと同時に、同じ年ごろで同じ職種の600人の別グル−プをつくり、こちらには何の指示もあたえず、調査票の記入だけをさせました。気ままな生活にまかせたので、あまり健康的ではない生活になってしまうのも、しかたありません。
 この両グループを観察していったのですが、常識的に考えれば、健康的な生活を強いられたほうが健康で長生きしそうですよね。
 ところが、15年後に調査してみると、驚くべき結果が出たのです。
 後者の健康管理されていないグループのほうが、心臓血管系の病気、高血圧、ガン、各種の死亡、自殺、いずれについても健康を管理されていたグループより数が少なかったのです。健康に気を使っていないほうが、病気もしないし、死亡率も低かったのです。
 それは、おそらく「心の問題」が身体に影響をおよぼした結果なのでしょう。タバコを吸いたいのに規制され、アルコールや砂糖も欲しいのに制限されることによって、精神的には大きなストレスが加わります。心が健康でいられなくなったわけで、それが身体に影響し、病気になったり死を招いたりしたのです。つまり、歳をとってからのガチガチの健康管理は、かえって健康を損ねるのです。
 50歳を過ぎると、急に健康に気を遣いはじめる人がいます。長生きで健康的な生活を目指しているのは分かりますが、あまりガマンガマンの生活だと、そのことが逆に健康を害することを認識すべきなのです。50歳を過ぎて、なお健康で若々しくいたいなら、「健康オタクになるよりも、生き生きした毎日を送ること」を心がけるべきです。
「年だから」といって、へんに聖人君子にならず、大いに人生を楽しんだほうが健康でいられるのです。

覚えていたことを思い出すテクニック=「出力に努めること」

 さて、記憶を向上させるためのテクニック。最終回は、引き出して使う「出力」についてお話しましょう。さまざまな知識をせっかく、覚え(入力)、忘れない(保持)ようにしていても、出力できないと使えません。出力、つまり心理学でいうところの「想起のプロセス」がうまくいかないと、使いものにならないのです。よく「喉のところまで出ているのに出てこない」といった経験はだれしもあるはずでしょう。これが、年をとってくると、なおさら多くなるのです。
 それは、アウトプットの練習が不足しているからです。日本の風潮のいけないところのひとつに、勉強したり知識を得てきたことを「能ある鷹は爪を隠す」などといい、発表はするものでないような雰囲気が、日本にはあるのです。勉強していることを、ふだんからベラベラと、「それは、こういうことなんですよ」と説明すると、感心されるどころか、「知識をひけらかして嫌味なヤツだ」と思われることが多いのです。この、知識をひけらかすことを評価しない文化によって、出力しないクセが日本人にはついてしまったようです。アウトプットもせずにひたすら勉強して、たとえ知っていても、訊ねられなければ答えない、といったことになってしまいました。また、出力する場が極端に不足していることも影響しているでしょう。
 これでは、入力段階の記銘、貯蔵段階の保持、そして出力段階の想起という記憶のサイクルがうまくまわらなくなりますね。せっかく入力して貯蔵している知識もムダになる確率が高くなってしまうのです。そうすると、本来一番大切な出力が下手な、データがあるのに引きだせない人間、すなわち知識はあるけれども使えない人間になってしまいます。
 本来、記憶は出力できないと使いものになりません。
 そこで、記憶力低下と闘うための第四のテクニックは、積極的に「出力」することになります。
 会社や友人の前で、ベラベラと知識を出力すれば、「嫌味なヤツ」と思われかねません。いくら記憶力低下と闘うためとはいえ、そう思われるのは損でしょう。しかし、たとえば、バーやクラブのホステス相手、バーテンダー相手なら、たとえ嫌味と思われようが、実生活に支障はないでしょう。
 しかも「聞き役」は、ホステスやバーテンダーの仕事のひとつでもあります。内心でどう思っているかは別として、客として話すことを、聞いてはくれます。聞いてくれないようなバーやクラブなら、行く価値がないでしょう。
 ともかく、そうした場所で出力すれば、記憶のサイクルがうまくまわり、記憶力低下を防ぐことができるのです。とくに最近の若い女の子・男の子なら、知識のある人間を素直に賢いと思ってくれて、もてることもあります。そうすると感情の老化予防にだって役立つのです。
 また、最近は、インターネットで自分のホームページを開いている人も多くみられます。日記から趣味にいたるまで、その内容は多彩です。そうしたホームページを出力の場として利用するのもいいかもしれませんね。旅の思い出なり、いま勉強している内容なりをここで出力していけば、記憶力低下の防止に役に立つでしょう。
 というわけで、5回にわたって記憶力低下を予防するお話をしてきたました。放っておけば低下するだけの記憶力も、低下させないための努力をすることで、維持したり高めたりできることを忘れてはいけません。次回からは、50歳からのメンタルへルスについてお話します。お楽しみに。
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和田秀樹〜私の素顔
和田秀樹さんの写真1960年生まれ、精神科医。東京大学医学部卒、アメリカ・カールメニンガー精神医学校国際フェロー。老年精神医学、精神分析学(特に自己心理学)、集団精神療法学を専門とする。日本初の心理学ビジネスのシンクタンク、ヒデキ・ワダ・インスティテュートを設立し、代表に就任。一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。
2004年より企業経営者のための会員サービス「和親の会」を発足。

和田秀樹公式サイト:

和田秀樹公式サイトバナー
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