 |
 |
男性の長寿ナンバーワンの長野県では、就業率が一番高く、ひとりあたりの医療費が一番低いという、外に出る意欲のある人多い=健康な人が多いということを前回述べました。それ以外に、長野では、以外に「PPK」という言葉がさかんに用いられているそうです。PPKとは何かといえば、「ピンピン・コロリ」の頭文字をとったものなのだそうです。つまり、「死ぬ直前までピンピンしていて、そしてコロリと死ぬことこそ最高に幸せだ」という意味です。
老人といえば、枯れたイメージを持たれがちで、ギラギラしたものがなくなって、瓢々としている風情こそが、好ましい老人の姿と一般的には思われているようです。「PPK」は、それとは逆に、いつまでも精力的、活動的で、「年がいもなく」といわれそうな老人をめざそうというのです。
代表格の一人としてアクション映画の巨匠といわれた深作欣二監督(故人)がいます。彼は一九九六年ごろに前立腺ガンの手術をしましたが、それでも女優との不倫交際をやめず、また、二〇〇二年九月にガン再発を告白しながら新作『バトル・ロワイアルU』の撮影入りを発表し、それに取りくみはじめた直後の二〇〇三年一月十二日に亡くなりました。彼は、とても「枯れた老人」とは結びつかない生き様でした。それどころか、まさしく「ギラギラした老人」でしょう。若い女優との交際を、「年がいもなく」とみていた人も多かったのですが、深作監督本人にしてみたら、枯れたのとギラギラしているのと、どちらが幸せな「老後」だったのでしょうか。少なくとも、晩年の深作監督は同年代と比べれば、ずっと若くみえた。それは、彼自身が人生を楽しんでいたからではないでしょうか。ガンでさえなかったら、きっと彼は長生きしたにちがいないと私は思っています。
学者でも、長生きした人は「ギラギラ」という表現がピッタリの人が多くいます。精神分析で有名なフロイトは一九三九年に八三歳で亡くなっています。当時としては、かなり長生きだったフロイトは、死ぬ数日前まで論文を書くなど、死ぬ直前まで、現役をとおしていたのです。ギリギリまで、自分の好きなことに全力投球していたことでは、深作監督と通じるものがあるようで、フロイトも、やはりギラギラした老人だったといえるでしょう。つまり、七〇歳を超えても、八〇歳を超えても、深作監督やフロイトのように一線で仕事をすることは可能なのだあって、ギラギラしていることが、一線でいる若さにつながっているのです。
長野県の人が 「PPK」を合い言葉にピンピンした生活、つまりギラギラした人生を心がけていることが、じつは日本一の長寿につながっている要因の一つといえそうですね。
覚えたものごとを忘れないテクニック
さて、記憶力を向上するためのテクニック。今回は、記憶した知識を貯蔵する「保持する力」についてお話しましょう。せっかく覚えたことをすぐに忘れては意味がありませんよね。前回お話したように、せっかく「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」ということわざのごとく恥をしのんでまで覚えたことを、すぐに忘れてしまったのでは意味がありません。記憶は、貯蔵されてこそ意味があるのです。心理学的にいう「保持のプロセス」が大事なのです。
それには、「反復」しかありません。
学生の頃の勉強を思いだしてもらえばよろしいのですが、英語の単語でも、見ただけで覚えられたという天才は、そう多くないはずです。覚えるためには、何回も口に出し、何度も書き、それでも忘れるので、数日後に確認して覚えなおす、といった作業を繰りかえしたはずです。記憶力のいい若いときでも、そうした反復をやらないと、なかなか記憶は貯蔵されないのです。ましてや記憶力が低下してくる五〇代以降なら、若いとき以上の反復をしないと、記憶を保持することは難しいでしょう。人の名前にしても、いったん覚えたつもりでも、保持されていないことがあります。思いだそうとしても、なかなか頭に名前が浮かんでこないために、歯がゆい思いをすることになります。
そんなことにならないためには、反復するしかありません。保管しておいた名刺やメモを取りだして、その人の顔を思いだしながら確認していくのです。それを何度も繰りかえしておけば、人の名前を記憶として保持することができるでしょう。
その反復のために、名刺の裏に、その人の特徴、会ったときの日付や場所、用件をメモしておくのもいいでしょう。もし忘れていても、そうしたメモをみると、すぐに記憶はよみがえってきます。ときどきそのメモを見返せば、反復を効率よくやることができるのです。
反復で記憶を保持すること、これが記憶力低下に負けない第三のテクニックなのです。
また、記憶の保持というものは、脳に刻み込むことです。脳に刻み込むということは脳に印象を与えるということですから、まずは覚え方の方法を増やすのがいいでしょう。これは人力の工夫でもあるのですが、歩きながら、書きながら、声に出しながら覚えるにしても、いくつものモダリティ(感覚の様式)が働くことが肝要です。
例えば声を出して覚えるということは、しやべることの経験にもなりますし、しやべりながら耳に入りますのでヒアリングという形の復習にもなります。ですから、なぜ音読がいいかといいますと、やはりいくつもの感覚を通じて、覚えることができるからです。
「ボキャブラリィ」という単語があれば、それを目で追うだけでなく、声に出してみれば、目で追った情報が、しやべるという体験ができた上に、耳から入るため覚えやすくなるのです。同時に何カ所も脳を刺激することにもなります。
ですから音読であれ筆記であれ、同じことをやるに当たって同時に何カ所も刺激できる方がよりよい記憶に繋がるのです。
ものを覚えておくにはとにかく反復すること、そして、書いたり声に出したりいろいろな方法を使ってきること。それを覚えておいてください。
次回は、記憶力を鍛える仕上げたための「出力」です。人に発表するテクニックについて幾つかの方法を述べる予定です。お楽しみに |
 |
|
●1960年生まれ、精神科医。東京大学医学部卒、アメリカ・カールメニンガー精神医学校国際フェロー。老年精神医学、精神分析学(特に自己心理学)、集団精神療法学を専門とする。日本初の心理学ビジネスのシンクタンク、ヒデキ・ワダ・インスティテュートを設立し、代表に就任。一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。
2004年より企業経営者のための会員サービス「和親の会」を発足。
和田秀樹公式サイト:
 |
|
|
 |