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和田秀樹 50歳からの活力人生
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1月 「外に出ようという意欲が長寿の源」 1/1
 先日、朝の情報番組で、「昆虫食が長寿の秘訣」というようなことを放映していました。たしかに、昆虫食は高たんぱく・高カルシウム・低脂肪で身体にはいいのかもしれません。しかしそれだけで長寿になると私は思いません。
 いま日本でいちばん長寿な県は、男性では長野県です。一九七五(昭和五〇)年には全国四位だったのですが、平成になったころから現在まで、ずっと一位の座をキープし続けています。二〇〇〇(平成一二)年のデータでは平均寿命は「七九・六七歳」となっています。全国平均が「七八・〇七歳」ですから、一・六歳上まわっています。ちなみに、女性も、二〇〇〇年で「八五・八六歳」と全国三位(全国平均は八四・九三歳)と、男女とも長寿県なのです。
 いまから二〇年近く前、この長野県の長寿の理由が議論されたことがあります。そこでは、「長野は山が多いために山歩きをする機会が多く、イナゴの佃煮・甘露煮などカルシウムが豊富な昆虫を食べているためだ」との仮説がたてられました。しかし、「昆虫食の習慣も薄れていくし、クルマの普及で山歩きもしなくなってくる。だから近い将来、長野県も長寿を誇れなくなるだろう」、といわれたものです。ところが予想に反して、その後、現在でも長寿県ナンバーワンの座を長野県は譲りません。むしろ、調査のたびに、平均寿命を更新してきているし、女性などは順位をどんどん上げているのが現実なのです。
 これは、二十年前に予想されたように、クルマの普及が伸びなかったわけではありません。軽自動車の普及率は、鳥取県、島根県に次いで長野は全国第三位なのです。東京のようにクルマを所有していても、乗るのは週末だけといった状態ではなく、近くの買い物はもちろん、どこに行くにもクルマが利用されているのです。歩く機会は、むしろ都会より少なくなっているかもしれません。
 では、昆虫食の習慣が薄れず、いまでもさかんに食べられているのか?。というとそうでもなく、完全になくなったわけではありませんが、昔ほどは食べられなくなっているようです。これは、流通の発達(全国チェーンのスーパーマーケットなどが増えたことなど)で、食文化の地域性が日本全国で失われてきていますが、長野県も例外ではないということです。
 では、なぜ長野県は長寿なのでしょうか。私は、「外に出よう」という意欲こそが長寿の原因だと思っています。
 ひとつは、長野県は高齢者の就労率が高いことがあげられます。年をとっても働きつづけることは長寿に確実に寄与するのです。
 もうひとつは、クルマを足代わりに使っているのも健康に寄与していると思うのです。高齢者にとって、出かけようと思えば、クルマに乗ってどこにでも行けることが、むしろ彼らを活性化しているのかもしれないのです。
 ショッピングモールやファミレスも増えてきているので、出かけるところもたくさんあります。地方のファミレスやファーストフード店に行くと、午後などはかなりのお年寄りが集まっていたりするのを見かけます。
 アメリカに留学中に私が驚いたのは、午後三時くらいになるとマクドナルドに老人たちがたむろしていることでした。そこでコーヒーを飲みながら、おしゃべりをしているのです。彼らは若いころから、そこを利用しているから、それが自然なのでしょう。このような文化が、どうも長野県に定着しつつあるのかもしれないのです。これは、クルマを足代わりに使っているからできることで、息子の世話にならないと外に出られない旧来の日本の環境から自立しているわけです。
 何らかの形で働いている上に、玄関の前に自動車がおいてあるから、「出かけよう」という意欲もわいてくる。それは、脳のなかで感情や意欲をつかさどる前頭葉にある、前頭前野という部分を刺激することであり、脳の老化を防いでいるのです。このような理由で、長野県は長寿を誇っていると私は思うのであります。
 クルマの多い東京では、警視庁がお年寄りから免許をとりあげようとするほどで、交通事情を考えれば、年寄りがクルマの運転を尻ごみするのは当然ともいえます。電車やバスが便利な分だけ運転の習慣もなく、移動には電車やバスを使わなければなりませんが、駅や停留所まで歩いていかなければならない。さらに、そこまで歩いたとしても、身動きもできないほど混みあう電車では、利用するのを躊躇したくもなります。当然、長野に比べて東京のお年寄りは外出しない傾向が強くなってきているのです。
 いつまでも若々しく、そして長生きするためには、外に出る意欲をなくさない環境が重要になってくるわけですが、六〇代や七〇代になって、そういう風な自分になろうと思っても、簡単にできなせん。できれば五十代から、外に出やすい環境を作っていってみてはいかがでしょうか。

ものごとを理解することで記憶しやすくなる

 さて、記憶力アップについての第2回目のお話をしましょう。
 前回、記憶力のなかで入力すなわち「記銘」を上げるには、ものごとに関心を持つこと=「注意」が必要だと述べました。物事に関心を持つことは、注意する力であり、記憶力低下と闘う最初のテクニックですが、もうひとつ、入力に必要なのが「理解」です。
 どんなに若くても、理解していないことを記憶するのは簡単なことではありません。たとえば、カラオケで英語の歌詞を丸暗記しようとしても、その意味がわからないと、なかなか頭のなかに入ってこない。しかし、その意味を考えながらですと、比較的楽に覚えられるものです。歌詞の内容を理解することで、言葉がつながってくるのです。歴史の話にしても、たとえば毎年暮れになると放映される「忠臣蔵」ですが、そこに登場する主人公浅野内匠守や大石内蔵助のほかに、さまざまな人物や、その時代に起こった「生類憐れみの令」などの事柄も、皆さんとてもよくご存知でしょう。これは、「赤穂浪士討ち入り」という歴史的事実だけでなく、物語を関心を持って見るうちに皆さんが理解し、47人の人物像ほか、さまざまな事柄を覚えていられるのです。
 つまり、覚えておきたいことがあれば、理解しなければならないのです。人の名前が覚えられなくて困るのなら、ただ丸暗記しようとしてもダメなのです。その人が自分にとってどういう人で、どういう顔で、どんな印象だったかをメモして理解すれば、名前も覚えやすいはずです。それでも覚えにくいのなら、理解とは多少異なりますが、関連づけという手法で、「ダジャレで覚える」という手もあるのです。
 要するに、ただ漠然と覚えようと思っても覚えられないのですから、意識して理解する努力をすること、それが覚えることにつながるのです。
 「理解」するには、入門書を読むことと、人に訊ねることが大事になってきます。
 「いい年して入門書なんか読めるか」とプライドが先にたってしまいがちですが、知らないことを理解するには、まず入門書から始めるしかありません。それも、できるだけやさしい入門書から入れば、理解は早いので、それだけ早く覚えられます。ここで大切なのは「見栄を捨てる」こと、そして、「訊ねること」です。
 たとえば、パソコンなどは、やさしいとされる入門書でも、ある程度の知識を前提に書かれていることが多いので、けっこう難しかったりするし、使われている絵や用語がとっつきにくいでしょう。そんなときは、まわりに聞くのが一番です。
「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」ということわざがありますが、これこそまさに五〇代以降のためにあることわざと知るべきなのです。
 「理解する」こと、それには「入門書を読み」「訊ねること」を活用すること、これが記憶力低下と闘う第二のテクニックであると心得ておいてください。
 さて、新しい年を迎え、皆さん「今年こそは〜〜を覚える」と意欲を持っている方も多いと思いますが、次回は、記憶した知識を貯蔵する「保持する力」についてお話しましょう。せっかく覚えたことをすぐに忘れては意味がありませんよね。「最近もの忘れが多い」と思っている方、ぜひお楽しみに。
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和田秀樹〜私の素顔
和田秀樹さんの写真1960年生まれ、精神科医。東京大学医学部卒、アメリカ・カールメニンガー精神医学校国際フェロー。老年精神医学、精神分析学(特に自己心理学)、集団精神療法学を専門とする。日本初の心理学ビジネスのシンクタンク、ヒデキ・ワダ・インスティテュートを設立し、代表に就任。一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。
2004年より企業経営者のための会員サービス「和親の会」を発足。

和田秀樹公式サイト:

和田秀樹公式サイトバナー
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