中高年になると、よく「昔に勉強をしておけばよかった」と口にされる方が多くみられます。そして、必ず次に「もう年だからいまさらやってもダメ」というあきらめの台詞が出ます。しかしながら、これは大きな間違いなのです。
頭も身体同様に、使わなければどんどん老化していきます。20代であれば1〜2ヶ月本を読まない生活をしていても、読まなければならないときには何とか読めるものです。ところが70や80になって、例えば病気で脳を刺激しない生活を1〜2ヶ月続けただけで、その後ボケたようになってしまうことが多いのです。このような回復力の差は出てくるのです。とはいえ、これは70歳を超えてからのことで、50代では20代とそう大差がない回復力があるのです。
20代となぜ差が出てくるのかといいますと、ズバリ、「頭を使わない」なのです。頭を使っていさえすれば、人間の頭は簡単に老化しないのです。能力的にはまだまだ新しい分野についての勉強はできるのです。それを「いまさら…」とあきらめてしまうのは逃避でしかありません。
人間の脳は年を重ねるに従って縮んで来るといわれています。私は仕事柄たくさんのCT写真を見てきていますが、年齢による萎縮は確かに見られるものの、80歳の重量で20歳のときの7パーセントほどしか縮まないのです。これくらいなら、実用機能としては何の問題もありません。80代の中曽根元首相が「まだまだやれる」とおっしゃっていることもうなずけます。つまり、脳が衰えるといっても、80歳でこれなのだから、50代で心配する必要はまるでないのです。
また、60代、70代の楽しい老後を送るには、50代から楽しく遊び学ぶ準備が必要です。
このところ、政治の世界でも経済の世界でもヤングパワーなるものがもてはやされ、30代40代の企業経営者や政治家、首長が続々と登場しています。その「若いことはいいことだ」信仰によって、60代70代の引退を待っていた50代は、自分たちがトップになる機会が奪われてしまっただけでなく、定年までのおまけ的存在やリストラ要員として肩身の狭い境遇になっています。
私は、本業の老年精神科医として、この若いことはいいことだという信仰が本当のことなのか?をとても疑問に思い、また、50代から先の人生をどう生きていけばいいのか考えてみました。
その結果、50代からやる気が失せて引きこもりがちになる人と、50代からよく学び遊んでいた人を比べると、よく学び遊んでいた人のほうが70代になっても若々しく、健康長寿でいられることがわかってきました。これは、最近の精神神経免疫学の知見でも明らかになってきたことなのですが、快体験は免疫機能を上げ、前頭葉の衰えを防ぎ、感情の老化を予防するのです。またよく学び頭のよさを維持した人のほうが老後の生存率も高いこともわかっています。
つまり、50代からよく学びよく遊べば健康よく、いつまでも若々しくいられるわけです。
というわけで、次回は中高年からの脳の鍛え方について述べる予定です。皆さんごきげんよう。